力を発揮して動きを作り出しているのは骨格筋であり、骨格筋に対して随意運動の指令を出し制御しているのは神経系である。
中枢神経系と末梢神経系
神経系は中枢神経系と末梢神経系に分けられる。
中枢神経系は脳と脊髄のことを指し、末梢神経系は中枢神経系と末梢(骨格筋など)間で神経インパルス(活動電位)を伝達する機能を持つ。
末梢神経系は感覚領域(いわゆる五感)と運動領域に分けられ、運動領域は更に自律神経系と体性神経系に分けられる。
自律神経系は心臓などの平滑筋の収縮、ホルモン分泌などの不随意機能を制御し、体性神経系は骨格筋の活動を司る。
神経系の基本的な単位は神経細胞(ニューロン)である。
中枢神経系から筋へインパルスを伝える神経細胞は運動神経、または遠心性神経と呼ばれ、この信号により骨格筋が収縮する。
反対に末梢から中枢神経へインパルスを送る神経細胞は感覚神経、または求心性神経と呼ばれ、この信号により張力・伸張・運動・疼痛・熱といった情報が伝わる。
そして神経細胞と筋細胞などの間で情報伝達が行われる場所をシナプスと呼ぶ。
運動神経とそれに支配される筋線維は運動単位と呼ばれ、それぞれの運動単位で支配されている筋線維は全て同じタイプになっている。
運動単位で支配されている筋線維の数は筋によって異なり、大きな筋の運動単位では多くの筋線維が支配されており、小さな筋の運動単位では支配されている筋の数が少ない。
筋紡錘とゴルジ腱器官
筋や関節と言った末梢から中枢神経に情報を伝える感覚神経の内、トレーニングにおいて特に重要な感覚器官が筋紡錘とゴルジ腱器官(GTO)の2つである。
筋紡錘は筋の長さの変化、特に急速な長さの変化を感知する。
筋が伸ばされると筋紡錘はその情報を脊髄へ伝達し、過剰な伸張を防ぐために筋の収縮が起こる。この反射を伸張反射、あるいは筋伸展反射と呼ぶ。
ボックスジャンプなどのプライオメトリクストレーニングでは速い速度で筋を伸張させ、直後に同じ筋で短縮性筋活動を行う。この素早い筋の伸長が伸張反射を引き起こし、より力強い短縮性筋活動をもたらす。
ゆっくりとした動きでの静的ストレッチであれば筋紡錘は刺激されない。弛緩している状態の筋が最も伸張しやすい。
ゴルジ腱器官は腱の接合部に存在し、筋活動に伴い変形する。
筋の発揮する力が大きいとゴルジ腱器官から脊髄に情報が伝達され、活動中の筋肉を弛緩させて拮抗筋を刺激する。
この防御反射によって過度な筋活動による筋と関節の損傷を予防するとされている。
筋力の調節
神経系は筋が発揮する力の強さを幅広く変化させられる。
(例えば同じ体重・同じ筋量であってもベンチプレスのMAXが80kgの人や100kgの人もいる。)
これは神経系が2つのメカニズムを用いて発揮する力を徐々に変化させていることに由来する。
1つ目は活性化される運動単位の数(筋線維の数)を変える方法で、運動単位の動員という。
軽い負荷では活性化される運動単位は少ないが、負荷が増してくると追加の運動単位を動員して、収縮する筋線維が多くなることでより大きな力が発揮される。
つまり最大強度の負荷であれば全ての運動単位を動員する必要がある。
また運動単位の動員には決まった順序があり、サイズの小さなタイプⅠ線維からタイプⅡa、タイプⅡxの順に動員される。これをサイズの原理という。
トレーニングを重ねる事で動員する運動単位を増やすことができる。
2つ目は既に活性化した運動単位の発火頻度を増加させる方法で、これを発火頻度の調節という。
先の収縮刺激から筋が弛緩する前に再び刺激する事で、より大きな力が発揮される。
スクワットやベンチプレス、アームカールなど力を入れ続ける事が可能な種目で利用可能な方法と言える。
(クリーンやスナッチなどのウェイトリフティング種目では一瞬の爆発力が求められるため、発火頻度を増やしての重量更新は難しいと思われる。)
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